君は僕のもの 【続】
当ても無く人混みの中を走り続けて、ほんのり身体が温まったような気がした。
「疲れた」
ボソッと聞こえた樹の声。
その割にその声と言葉が一致しないのが不思議な感じ。
「…だねっ、……そこ、座ろ?」
あたしがそう言って樹に笑い掛けると、そのまま縦にコクンと頷いてあたしよりも先にベンチに腰を下ろした。
季節的にはもう冬で、寒さが頬に突き刺さる筈なのに…ちょっと頬が温かい。
手は冷たく冷えてる筈なのに、何だか温かい。
それは隣に樹が居るからなのかなぁ…?
だんだん心も身体も温かくなってきて、それと同じようにだんだん顔も綻んできちゃって。
何か幸せ。
「乗りたかった?……アレ」
白い息を見たかったのか、ハァッと息を吐いて樹はそう言うと、あたしの顔を珍しく遠慮がちに見て言った。
多分、これは樹なりに気にしてくれたの、かな…?
やっぱり樹には悪いけど…嬉しくって微笑ましくって、それでもってやっぱり嬉しくって。
「…ううん、いいの」
「お金、勿体無かったね」
「確かにそうかもしれないね」
今日はクリスマスで、遊園地に来てたっくさん乗り物に乗って…
だけどこうやって二人でゆっくり過ごすのも悪くは無かったのかもしれないな。
やっぱりいつものあたしで、
だからこそ樹もいつもの樹で。
それが何だか心地好い。