君は僕のもの 【続】
「真っ赤」
フッと余裕そうな、それでもってやっぱり小馬鹿にしたような笑みを浮かべて、樹はあたしの唇をなぞる。
これは樹のキスの前の合図。
だからこそ“期待”ってやつをしちゃうあたしは…
ただ、ただ脈打つこの鼓動の速さを、どうしようもないくらい止めることが出来ない。
けど繋いでいた手が離れたのはちょっぴり寂しかった。
「……っ」
言葉にならない想いを目で訴えれば、少し優しい瞳があたしに向けられる。
やっぱりこの視線はとても優しい。
この瞳がいつまでも、いつまでもいつまでもずっとあたしだけに向けられますように…と、
ささやかながらの祈りを少しだけ。
「唇が冷えてるね」
焦らす様に指を伝わせて、
「だ、…だって…寒いもん……」
上手く目が見られなくて視線を泳がせるようにずらして、
絡まりそうになるこの熱い樹の視線から逃れるように右や左にゆらゆらと。
すると唇に当てていたその指をペロッと一舐めすると不敵な笑みをニヤリとあたしに小さく秘かに向けた。
「やっと元に戻った」
と、突然なその発言にあたしの頭はポカンとする。
「…戻った?」