君は僕のもの 【続】




少し手で口元を覆うようにして、だけどちょっと馬鹿にしたように笑われる。


けど…

あたしには、全く?


「…ねぇ?」

あたしが訪ねても樹は笑ったまま何も言わない。


なに…っ?

そこまで面白いものだったわけですか…!?


やっぱり、あたしにはさっぱり分からないよ、本当に。


「ふはは、面白いね」

樹にしては珍しいくらいの高笑い。


「面白いって…─」

あたしがそう言って樹に詰め寄った瞬間、ゴンドラのドアが開く。



「…お疲れ様でした~」

気の抜けるような従業員の声。


それと同じように気が抜けるのはあたし。


するとそんなあたしを押しのける様に樹はその従業員の女の子に言う。

「もう一周、お願いします」

ニコッと笑って愛想をふりまく樹は。


あたしの見たことがない感じで、…まさにどこでそんな“営業スマイル”覚えてきたんだろう?

そんな感じだったわけで。


従業員の女の子も満更でもないって感じで、少し頬を染めて『分かりました』とか言っちゃってさ…?


まったくもうっ!


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