君は僕のもの 【続】
今度は向い合せにあたしを座らせると、樹は優しく笑ってくれた。
「驚いた?」
そんなの…
驚いたなんてもんじゃないよぉ、
スンッと鼻をすするあたしを見て、
「何で泣く?」
困ったような…でも、ちょっと子供をあやすような雰囲気を漂わせている。
「…だ、だってぇ…っ…うぅ……ありが、とぉ…」
目頭を手で押さえるようにして言う。
当然こんな顔を見せたくなくて俯いた状態になってしまう。
バイトだって途中で辞めたんじゃなかったの…?
こんなの買ったら、…樹のお金、無くなっちゃうよ…?
自分の為に使えばいいのに、
なのに樹は何だかんだでこうやって優しさをあたしに見せてくれる。
飾り気の無い、
きっとこんな樹を皆は知らないんだろうな…、こんな優しくて、不器用にも愛してくれる樹を、きっと、きっと。
この先もずっとあたしだけを…
「はいはい」
あたしの頭を撫でながら樹は言う。
…そうだ、あたしもプレゼント…あったんだけど、
何だかこんないい物を貰った後にはとてもじゃないけど渡しにくくて。
けど『ありがとう』って気持ちを伝えたくて。
けど嬉しさとか色んな気持ちが雫となってあたしの瞳を濡らして…頬をびっしょりと濡らして。