君は僕のもの 【続】
隣で『何だっけ…?』と首を傾げて必死にさっき、本当についさっき…!
お母さんに頼まれたものを思い出す。
…あぁ、情けない。
本当に何分とも前のこと、忘れるなんて…情けない。
隣でクスクスと笑ってあたしを見る樹。
何だかこんな風に悩み自分の情けなさを責めるあたしを見て、心成しか面白そう?…いや、楽しそう?
「馬鹿にしてる」
ムッとしながらそう言えば、当然のようにも彼は言った。
「してるけど?」
ま、負けた…っ!
それでも見下すよにそのお得意の嘲笑は忘れない。
やっぱりあたしを見下したうえに、面白がってるんだ!
そう思いながらもやっぱり夕暮れに映える樹の姿は息を呑むようなもので、…ズルイと思うんだよね、本当。
猫っぽい目に淡い色をしたその瞳に夕暮れが射し込み、
柔らかなその少し明るい樹の髪が、ささやかな風になびくようにして揺れる。
「なにボーっとしてるの?」
グッと距離を縮められて、背筋にゾクゾクっとした感覚が襲って正気に戻る。
何か…本当、情けないけど。
見とれちゃってた、みたい…です。
はぁっと心の中で呆れた溜め息を自分自身に漏らしたのは、言うまでも無いわけで。