君は僕のもの 【続】
でも、言ったら返してくれるんでしょう…?
そう思って口にした、“プチ個人情報”
「き、桐島、…桐島愛梨、西高の…一年」
ボソボソとあたしは言い終えるとすぐさま『返して!』と大きな声を張り上げる。
たまたまトイレの近くのここにお客さんが居なくて本当に良かった、と少しばかりの安心感に浸ってみる。
「西高かぁ…」
ニヤリと不気味な笑みを浮かべると、
あたしの顔にグッと自身の顔を近づけてくる。
「“これからよろしく”…愛梨」
そう囁いて離れた。
そしてそのまま茫然と立ち尽くしてると、……またもや悲劇。
「そうだね、『よろしく』」
あたしの背後から聞こえる声。
その声にビクビクっと背中に氷を入れられたような感覚。
「……い、い…いぃっ!!」
言葉にならずに喉の奥に突っ掛かった『いつき』という言葉。
べ、べっつに!や、…疾しいことをしていた訳じゃないのに、どんどん加速するように速まるのはあたしの心臓。
「あ?…誰、コイツ」
顎で樹を指すようにして、あたしに問う。
止めた方がいい。とあたしは思う。
「…か」
「か?」
「か…かれ、「彼氏」」
オドオドして何も言えないあたしの言葉を代弁するように、後に居た筈の樹が真横でそう言う。