君は僕のもの 【続】
…樹side




会計を済まして袋に買った物を詰め込む。

周りは家族連れとか、婆さんとか…、だから自分がちょっと浮いてる気がしてしょうがない。


さっき愛梨にトイレに行けって言ったけど。

今頃きっと驚いてるんだろうな…とか思ったりする。


何しろ『色気より食い気』が常にテーマの愛梨。


目の前の視界にチラチラ入ってくる“試食”をアイツが食べないわけがない。…多分、ていうかやっぱ確実に。

それでさっきレジに並んでて気づいたんだけど…


口の横にタレ?みたいのがくっついてて、正直そこで笑ってやろうか思ったけど放っておいた。

その方が面白そうだし?


うん…きっと、



…だけど。

ちょっと遅いかな、なんて安易なことを考えてるのが間違いだった。



「“これからよろしく”…愛梨」

トイレの側の少し他の客の目に付かないような場所で、聞こえた見知らぬ男の声。

本来なら反応する必要は無い。


無い。


無いんだけど…



聞こえた『愛梨』って言葉に過剰反応する。


「そうだね、『よろしく』」

苛立つのを少しだけ抑えて、俺は無為にもそう口にしていた。


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