君は僕のもの 【続】
不気味にニヤリと笑うその口元から見えるその八重歯、…それが何だか俺を煽るようで気に喰わない。
「…『この人』って、心外なこというんだな~、アンタ」
と低く少し擦れた声で言うと、
ゆっくり。俺達の方に歩いてきた。
それに伴い焦る愛梨の顔色からして、もしかしたら何かあったんじゃないか…と、嫌な予感が過ったりもした。
「アンタ…?」
俺の顔間近まで近付くと、余裕な笑みを浮かべたからムカついてそう言い返す。
愛梨の腰に回した手に少し力が加わるのが分かって、
それに対して愛梨がギュウッと俺のパーカーを握りしめるから。ね?
「そう、アンタ」
俺より1㎝位しか変わらなそうなその背丈が、俺とソイツの目線を嫌でも合わせてしまうから、迷惑なんてものじゃ言い切れない迷惑。
……それに。
きっと愛梨はこの男がこの顔だからこんな事になったんだろう、と。
ムカつくけど思う。
ボーっと、見つめたりしたんだろうね。馬鹿だから。
「アンタにアンタって言われるのは、凄い癇に障るね」
柔らかな笑みを少しだけ浮かべて俺がそう言えば、ソイツも楽しそうに笑ってみせる。
「へぇ~、アンタ?」
絶対コイツ今わざと“アンタ”って言ってんだろうな…とか思う。
ムカつく、ていうかウザい。
「どうでもいいから、お前消えてよ、…目の前から」
嘲笑しつつそう口にすると、愛梨が心配そうに俺を見上げていた。