君は僕のもの 【続】
帰り道、黙りこくるのは愛梨。
ついほんの何分か前に『唇、舐められた…』とか半ベソで言うからね。
『舐められたんだ』
と俺はそう言って笑った。
引き攣りながらも。
さっきまでは『けどあたしちゃんと文句言えたんだよ!?』とか言ってた癖に、『だから何?』と俺が言った瞬間に全ては終わったわけだ。
……沈黙。
俺はボーっと星をチラッと見ながら歩いてて、平然を装ってて。
だけど頭の中じゃ、やっぱりさっきアイツの息の根を止めてやれば良かった、とかなり後悔してたり。
「…怒ってないの?」
シーン静まり帰る夜道で、その細く繊細な声が響く。
「怒る?…俺が?」
フッと小さく笑いながら俺はそう言って、
愛梨に持っていた、さっき買ったばかりの物が入ってるビニール袋を渡す。
「…じゃ、おやすみ」
その声に驚きながらも、やっと此処が家の前だと愛梨は気付く。
そしてその揺れる瞳はその後に起こる現象を物語る。
「強気で言い返せたんじゃないの?」
クスクス笑いながら俺が言う。
そうすれば目に溜めた水分をポロポロと飴玉みたいに降り注ぐ。
「樹は……っ…違うもん!」
下唇をかむその愛梨の表情は、やっぱり俺を煽らせるものでしかないんじゃないの?