君は僕のもの 【続】




「あからさまに嫌そうな顔してんね」

楽しそうに笑い、ゆっくりあたしとの距離を縮めると、…不意に口元に見えた八重歯。


何かそういうのが…妙に怖くて仕方が無い。



やっぱり、樹に一緒に来てもらえば良かったよ……。

だんだんと焦りを増すあたしの表情を見て、彼は再び意味深な微笑みを見せてくる。


「…っまぁ、せっかく会いに来てくれたんだし、

俺の名前は白井暁、…『シライアキ』ね?」


と『シライアキ』を一つ一つの言葉に区切ってあたしに言った。


けど、あたしにはそんなの…どうだって良くて、

「返してよ…、指輪!……返して」

最初は強気だったのに。


少しずつこの教室の密室空間に二人、…ましてやオオカミみたいなこの人と一緒に居るなんて、

考えるだけで、あたしの突然な思いつきはかなり危険なことだったみたい。


だけど…返して欲しい、だって…


だってだって!

あたしにとってその樹から貰った指輪は大切で本当に大事なものだから…


少し目頭が潤むのが分かる。

…けど、ここで泣くわけにはいかない、そう思って下唇を思い切り噛む。


「返して欲しい?」

下を向いたあたしの顔を上に向かせるように、クイッと顎を掴まれる。


少し震える手を押さえて。


「…返して」

ギュッと唇を詰むんでから口にした。


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