君は僕のもの 【続】
「…え、…ちょ…!!」
伝う手を押さえるあたしの手の力は微力で、何の歯も立たない。
そんなあたしの手があることさえを盲目に無視して進む手、指、触れるのは指の先にある短過ぎない樹の爪。
そんな微かな感覚が、どうも思考能力を奪い去る。
さっきの口付けで甘く酔いしれて…痺れた身体に伝うその樹の指が、
あたしの表情を、“素直”なものにしてしまうから。
「ダ、ダメ……だ、よぉ…」
ギュッとネクタイとワイシャツを掴む。
「よく言うよ」
瞬間、樹はあたしの足元に屈むとその太股の内側に唇を寄せた。
あ…っ!
無意識にも身体を捩じらせてその行為を拒む。
だって…こんな……
だんだん赤く染まる顔と高鳴って、ドクンドクン…心臓の外にいるあたしにも聴こえる自分自身の鼓動。
焦るのは僅か遠くに聞こえる生徒の声。
一分という短いようで長い時間の経過を教えた、時計の針の動き。
「っね…ねぇ樹…!…そんな……っ」
壁に背を寄り掛せるようにしてもたれ掛かる。
壁に片手をついて自分を支えるけど、…厭らしくスカートを少し捲る樹の手つきがあたしの脈を乱す。
もし、誰かに見られたら…
そんな気持ちでいっぱい。
その半面で、触れてほしいと思う自分は…駄目な人間なのかな…?