君は僕のもの 【続】
「他の物ならいいけど、お前は駄目」
そう言って、あたしの髪の先を指に絡みつけて強請る様な目をする。
そんな樹の表情にもあたしは弱いのに、ずるいと…そう思っちゃうよ、あんなこと、されたのに許しちゃう。
全部、その表情一つで無かったものになっちゃうよ。
「…うん」
素直にコクンと縦に頷くとその樹のムッとしたような不機嫌顔は少しだけ和らいだような気がした。
だから少しだけ安心な気分。
「俺、嘘とか嫌いだし…
許さないって言ったら許さないし、嫌なものは嫌だから」
ゆっくりと距離を詰めて耳元で『分かった?』と囁き、ワザとらしく熱い吐息を漏らす。
カッと熱くなっていく頬、頭、耳。
そんなあたしを見て樹は笑うとその頬や額…耳に、甘くとろけるような口付けをしていった。
「分かった…」
少し俯いてた顔を上げて見上げる様にして言う。
「その顔も他の奴にはしないでって…これも前に言った気がする」
「あ…ごめん、……けどその顔、って?」
よく言われる『その顔』ってどんな顔のこと?
もしかしてあたし変な顔でもしてたのかなぁ…例えば鼻の下を伸ばしてたとか?それとも鼻水垂らしてたとか…?
あぁ…っ、あり得る!
あり得過ぎて怖いくらいだよぉ。
「その顔」
と短く言うとあたしを人差し指で示す。
けど分からなくて首を傾げれば、
「そそる顔って…感じじゃない?」
と顔色一つ変えずに言うと『行くよ』と短く言って教室を出て行く。
そ、そそる…って?!?!
顔を赤らめたまま、あたしは樹の背中を追い掛けた。