君は僕のもの 【続】




だから何回も言うけど…その“王子”って呼び方をどうにか……って。

そんなことを考える余裕はその視線の先の光景で、瞬時に俺の頭の中が一度だけ空になる。


「…どうしてこう、悪いことって続くかねぇ」

苦笑いの早川。


早川の言う事はほとんど意味の分からないものだけど…今回ばかりは確かにその意見は正しいわけで。

うん、凄く正しい。


「愛梨」

そのまま俺の席から一番反対側の方に歩を進めると、そこには…


「あ、矢上くん?」

得意げに笑う奴と。


「…い、樹……」

とバツの悪そうな表情をしながらも、少しシュンとした愛梨。


「あーえー…隣、なの?」

俺の横から顔をヒョイッと出して早川がそう愛梨に尋ねると、愛梨はコクンと深く頷いた。


「何それ、何か俺と隣じゃ嫌みたいに見えるんだけど」

嫌でしょ。


「見えるんじゃなくて、事実だから」

俺がそう言えばグッと距離を縮めて、フッと口元を三日月みたいにして笑った。


「へぇ…ジェラシーな感じ?」


それだけ言うと、新しい“その席”に座った。



ムカつくんだけど。

ていうかジェラシーって何?


だんだんと苛立ちが増してきて、俺の前の席と変わらない新しい席に座った。


< 223 / 425 >

この作品をシェア

pagetop