君は僕のもの 【続】
だから何回も言うけど…その“王子”って呼び方をどうにか……って。
そんなことを考える余裕はその視線の先の光景で、瞬時に俺の頭の中が一度だけ空になる。
「…どうしてこう、悪いことって続くかねぇ」
苦笑いの早川。
早川の言う事はほとんど意味の分からないものだけど…今回ばかりは確かにその意見は正しいわけで。
うん、凄く正しい。
「愛梨」
そのまま俺の席から一番反対側の方に歩を進めると、そこには…
「あ、矢上くん?」
得意げに笑う奴と。
「…い、樹……」
とバツの悪そうな表情をしながらも、少しシュンとした愛梨。
「あーえー…隣、なの?」
俺の横から顔をヒョイッと出して早川がそう愛梨に尋ねると、愛梨はコクンと深く頷いた。
「何それ、何か俺と隣じゃ嫌みたいに見えるんだけど」
嫌でしょ。
「見えるんじゃなくて、事実だから」
俺がそう言えばグッと距離を縮めて、フッと口元を三日月みたいにして笑った。
「へぇ…ジェラシーな感じ?」
それだけ言うと、新しい“その席”に座った。
ムカつくんだけど。
ていうかジェラシーって何?
だんだんと苛立ちが増してきて、俺の前の席と変わらない新しい席に座った。