君は僕のもの 【続】




「だから…多分、白井くんはそこまで悪い人じゃないような気がするの」

屋上で樹とお昼休みを過ごしながら、あたしはここ何日かで思ったことを不意に口にしてみる。


けど……

樹の表情はどんどん不機嫌なものに変わっていく。


「何それ?」

嫌そうにあたしを見て、ハァッと溜め息を付いてからコーヒー牛乳を一気に飲み干した。


やっぱり言うべきじゃなかったのかな…とか思いながらも、

「だって指輪も…返してくれたし…」

とあたしが言えばその飲み干したコーヒー牛乳のパックをギュッと握り潰して、思いっきり嫌そうな顔をあたしに向ける。

その少し鋭い瞳に、グッと胸を掴まれそうになるから…危ない。


「愛梨は指輪返してくれたら良い人って思うわけ?」

その視線が痛い。


この感じの樹は完全に怒ってる時だ…

やっぱりこんなこと言わなきゃ良かったとか後悔しつつ。


「そうじゃ…無いけど…っ…」

きつい言葉を返されれば、自分の言葉に自信なんて無くなる。


「じゃぁ何?」

そんな…言い方しなくても。いいのに……


シュンとして下を向く。

「仲良さそうだもんね、何だかんだでアイツと」

鋭いその眼差しがどうしようもなくあたしの心臓を速める。


“アイツ”という部分に力が込められてるのが分かって、次の言葉が出てきてくれない。



「違うよ…違う、もん」

泣きそうになるのを堪えて、そう言うけど。


「何で泣くの?」

樹の怒りが感じ取れるその声に思わず身体をビクッとさせる。


< 226 / 425 >

この作品をシェア

pagetop