君は僕のもの 【続】
完全に黙りこんでしまったあたしに苛立ちを覚えた樹は、そのまま何も言わずにあたしに背を向けて歩き出してしまった。
「…あ、……いつき…っ」
心細く響いた声に、樹は立ち止まると…ゆっくりあたしの方を振り返った。
「分かんない」
分かんない…って?
そう聞きたくても聞けない自分の性格が嫌で堪らない。
「……っ」
「…勝手にして?」
冷たい瞳をあたしに向けてそう言うと、そのまま屋上を出て行ってしまった、…しかも最後に目があった時。
凄く怒ってるのが、分かって…
「…何、してるんだろ……」
もしあたしが逆の立場ならきっと泣いて泣いて。
無神経なこと、しちゃったし…言っちゃったよあたし……
どうしていいか分かんなくて結局その後、午後の授業が始まっても屋上で一人ポツンと空を見上げていた。
そうだよ…、
急にどうしちゃったんだよ、あたし。
でもあの時に見た白井くんのあの表情は、今まで見た表情とは比べ物にならないくらいに哀しそうで、…儚くて。
まるで誰かを想ってるみたいだった。
白井くんはあたしにあんなことをよく言ってくるけど…もしかしたら別の誰かを。
そんなことを考えてる時だった…
「あれ、先客かな…って、愛梨ちゃん?」
スラッとしたスタイルに、爽やかな声と顔立ちの人がそう言った。