君は僕のもの 【続】
「あ…っ、英二先輩…」
どうも今の気持ちがそのまま声になって出て行ってしまう。
そんなあたしの様子に気が付いたのか、
少し不思議そうにあたしを先輩は見つめた。
「また王子様と喧嘩?」
薄ら笑いを浮かべながら、あたしの隣の壁に寄り掛かって言う。
久しぶりに見る先輩は大人っぽくて…
何だか少し髪の色が暗くなっていた。
「なんで、分かるんですか…?」
思わずそう返すと、
「さっきそこの階段ですれ違ったらさ、すっげー怖い顔してたからさ」
と屋上の扉を指差しながら、微かに頬を緩ませて言った。
やっぱり…
樹、怒ってるんだ。
だんだんと頭の中と気持ちがグルグルしてきて…
言葉を失ったまま、口を紡ぐ。
「原因は…噂の転校生って、ところかな?」
クスクスと面白おかしそうにあたしの顔を見る。
「そんな、有名なんですか…?」
「まー、俺は特別よく知ってるからなぁ…って感じ」
やっぱり先輩はいつもの笑みを絶やさずに話を続ける。
なにか、知ってるのかも…
そう思った時、
「聞きたい?」
と先に心を読まれたように言葉を返されて。
コクン。
あたしは大きく頷いた。