君は僕のもの 【続】
無表情の樹と、ニコニコ笑う先輩。
そんな相対する二人をチラッチラッと何度も行き来するように見比べる。
「…何?」
すると嫌そうに樹が鋭い目をあたしに向けて言う。…だから怯んだ様にあたしの視線は地面に向く。
「あーあ、あんまり苛めちゃ可哀想だよ?愛梨ちゃんは可愛いんだから」
と今度は樹を煽る様なことを先輩が言う。
「せ、…先輩っ!!」
それに対して何だか照れるような、でも困ったような…
そんな気持ちになって先輩に少しだけキツいような言い方をしてしまうけど、仕方ない。
「あのさぁ…」
そうすれば今度は樹が先輩に近付くと、不機嫌そうな声を表情を向けて。
「愛梨に話し掛けないでくれない?あと近寄んな」
と何の感情も込めてないような声音と、…でも少しだけ入った苛立ちを先輩に向けた。
「はいはい、
…で、話の続きしていいかなぁ?」
それを先輩は重く…では無く軽く受け止めたみたいだった。
「……。」
その問い掛けを“完全無視”して、樹はいつもの癖なのかフェンスに背中を預ける様に寄り掛かって視線だけを先輩に向けた。
もちろん先輩とは距離を取ってだけど…
「はい、お願いします」
とりあえず代わりにあたしがそう言うと、樹は面倒くさそうな表情をしたけど…まぁ仕方ないかと言うように、
深いような何処か諦めの混じる溜め息を吐いた。
「君も大変だねぇ…
えっと、…どこまで言ってたっけ?」
「何で別れたのか」
何だかんだで樹は話をちゃんと聞いてたみたい。
と、少しだけ心の中で安心。…した、ような気もした。