君は僕のもの 【続】
「梓紗の家のお母さんは凄い良い人なんだけど、…お父さんがちょっと厄介でね」
と奴は言うと少し苦笑い。
そもそもどうしてこんな話をする必要がある訳?
アイツがどうなろうと関係無いし、考える必要性すら無いんじゃないの?
「厄介…?」
「うん、梓紗のお父さんって会社の社長で…その会社に暁のお父さんが働いてる感じ?」
あー…それはかなり最悪だね。
ていうか思ったんだけど、もしかして……
コイツをまたその梓紗って女のところに戻せばもう愛梨にちょっかい出すこと無いんじゃ?
でも俺はそんなの…面倒臭そうだし。
「あの…もしかして、ですけど…
白井くんの転校と二人が別れたことって、何か関係あるんですか?」
と愛梨が言うと、奴は顔を顰めて言った。
「転勤、させられたんだよね、娘に近付くなって感じで…」
「やること大胆」
「…樹っ!!」
思ったことをそのまま言っただけなのに、愛梨に怒られる。
何で俺が怒られなきゃいけない訳…
と一人でムッとしてる間に話はどんどん進む。
「ははっ!、確かに大胆だよね、
まぁ、会社を取り仕切る社長となれば何だって出来ちゃうし、それに梓紗は一人娘だから…大事だったんじゃないかなぁ?」
「そうだったん…ですか……」
見事に情に流されやすい愛梨は、もう今にも泣きそうな顔をして俺のことを見る。
「…嫌だ」
口を開いて何かを言おうとした愛梨を制して言うと、『まだ何も言って無い!』と愛梨は不貞腐れる。
「だって…可哀想だよそれじゃぁ、2人とも…」
シュンとしながらそう言った愛梨を見て、
やっぱり俺の思った通りのことを考えてたらしく、俺自身も先に嫌と言って良かったと安心する。