君は僕のもの 【続】
こういう時、
本当いつもこういう時にあたしは単純な生き物だな…なんて思っちゃう。
樹の一言で泣いたりしょげたり悩んだり、でもそのぶん樹の一言で嬉しくて顔がすぐ緩んじゃうから本当。
「あっそ。…つーか言うつもりじゃなかったのに」
と額に手を当ててバツの悪そうな顔をすると、あたしにその重い視線を向けて一瞬だけ嫌そうな顔をした。
あ、相当今の樹…苛々してる。
出来ればここは樹を刺激するわけにはいかない。
…けど、やっぱり嬉しすぎる!!
だって…だってだって!!あの樹が…あたしの為になんて本当、勿体無さ過ぎて、
「どこでバイトしてるの??」
あたしの目はもうきっとハートでいっぱいだったかも。
「嫌だ」
と不機嫌顔。
「どーして!?」
「嫌だから」
「…何か、疾しいことでもあるの?」
すると更に彼の顔は不機嫌になって、
「無い」
と単語で返されてしまう。
やっぱり基本的に樹が単語以外で言葉を発することのが珍しいから別にそこまで動じないあたしは本当、我ながら結構凄いんじゃないかな…何て、
樹が知ったら鼻で笑われそうだけど。
でも樹は別に悪気があってそういう態度なわけじゃなくて…
もともとそういう冷たい態度しか取れない人だから、まぁ仕方ないし。直る直らないの問題では無いな。
それでもあたしの好きな人は樹だから…
いいんだよ、うん。…そうだ!!
ってよく分からない感じになったけど、
「探すな、来るな、本当に」
頭上でそんなどこかの標語みたいな言葉が聞こえてきて、上を見上げる。