君は僕のもの 【続】
するとゆっくり肩を押さえ付けてた手を離す。
若干だけど伏し目がちだった瞳は上を向いて、一瞬空を見つめて。
「ずっと…って愛梨は思う?」
「…え?」
頭の中が興奮状態だったせいか、急な質問に戸惑って間抜けな声を出してしまう。
「まぁ…悪かった。別に怒鳴るつもりがあった訳じゃねぇんだよ……ただ、」
空を見つめてた視線が不意にあたしに向けられて。
少しだけ距離を置くように歩き出して振り向く。
…ただ?
「何でも理想が通るなんて思ったら大間違いだって話」
そう言ってからポケットに手を入れて煙草を取り出すと一本だけ出す。
けど、あたしの顔を見てからそれを閉まって、小さくだけ笑った。
「ナニ…ソレ?」
急に冷静な話を言い出すから。
「理屈じゃ無ぇし。理想じゃ無ぇし。……何より、俺には幸せは似合わねぇよ」
卑劣な程に哀しい。
そんな微笑を浮かべてハァーッとワザとらしく白い息を吐いた。
するとあたしの後ろを見てニヤつく。
何だろう…?そう思って後ろを振り返ろうとして…
油断したその時。
─グイッ!
急に引き寄せられて、腕の中に納められる。
「戻れねぇんだよ…」
小さく耳元で呟かれた声。
「そうだろうね」
ふふっと笑ってから聞こえたのは………
…不思議な彼の声。