君は僕のもの 【続】
混乱の糸でクルクル。
絡まったまま思考が上手く働かないあたしは、その抱き締められた状態で呆然とする。
甘い甘い香水の匂いに包まれて染められる前に。
「…っ、…あ!」
ハッとして何となくだけど今の状況把握は出来た、ような感じで。
「何度も言うんだけどさ…返して、ソレ」
あたしを指差してそう言い放つ。けどその表情は凄く苛立ってるようにも見える。
「はいはい」
ケラケラと笑いながら、彼はあたしを離す。
急に離されてグラッと体勢を崩すと、それを樹が支える様に抱き止めた。
「…あ…ありがと……」
昨日のこともあるけど。
何か気まずい感じがあって無意識にも伏し目がちになるし、声も小さくなる。
「“ありがとう”?」
すると皮肉にも聞こえる樹の声。
あたしを見下ろしながら、嫌そうな声と表情が見上げれば目に入って。
……すっごい、不機嫌。
「許した訳じゃないよ?ただ自分のモノを人に“盗”られたくないだけ」
と微笑みの一つも見せずに無表情。
「…モ、モノ…って…」
ボソッと小さくだけど呟く。
けどその呟きは樹の耳に入ったみたいで、無表情だけど怖い。そんな表情をされた。