君は僕のもの 【続】




混乱の糸でクルクル。

絡まったまま思考が上手く働かないあたしは、その抱き締められた状態で呆然とする。


甘い甘い香水の匂いに包まれて染められる前に。


「…っ、…あ!」

ハッとして何となくだけど今の状況把握は出来た、ような感じで。


「何度も言うんだけどさ…返して、ソレ」

あたしを指差してそう言い放つ。けどその表情は凄く苛立ってるようにも見える。


「はいはい」

ケラケラと笑いながら、彼はあたしを離す。


急に離されてグラッと体勢を崩すと、それを樹が支える様に抱き止めた。


「…あ…ありがと……」


昨日のこともあるけど。

何か気まずい感じがあって無意識にも伏し目がちになるし、声も小さくなる。


「“ありがとう”?」

すると皮肉にも聞こえる樹の声。


あたしを見下ろしながら、嫌そうな声と表情が見上げれば目に入って。

……すっごい、不機嫌。


「許した訳じゃないよ?ただ自分のモノを人に“盗”られたくないだけ」

と微笑みの一つも見せずに無表情。


「…モ、モノ…って…」

ボソッと小さくだけど呟く。


けどその呟きは樹の耳に入ったみたいで、無表情だけど怖い。そんな表情をされた。


< 254 / 425 >

この作品をシェア

pagetop