君は僕のもの 【続】
「何か…標語みたいだよ?」
クスクスと笑ってしまうあたしをまた嫌そうに見る。
きっとこの樹的標語“探すな、来るな、本当に”は、
バイト先を探すなってことと…仮に探したとしてもその場所に来るなっていうこと。最後の本当にっていうのは、まぁ念押しみたいな感じなのかな?
けどそう言われても…気になるし、うーん。
後で翔太くんに聞いてみようかな…なんて悪知恵が少々働いてしまう。
「…本当、愛梨のせいで打ち壊しだよ」
とフェンスから離れてあたしの隣に腰を下ろす。
「でも…心配だったんだよ?」
浮気疑惑は本当かなり寿命を縮められたもんね…気が気じゃ無いってまさにこんなこと。
そんなあたしの顔を覗きこんで少し視線がぶつかると柔らかい笑みを浮かべてから樹はあたしの髪の先を指に絡めるようにして、
不敵にもミステリアスに笑ってみせた。
やっぱり樹のそんな表情はいつも心の中を奮い立たせてくれる。
自分の幼馴染だった樹。それで今はそんな幼馴染だった人はこうしてあたしの隣に居て時折優しくこう笑ってくれる大好きな彼氏。
自惚れかもしれないけど、いつ見ても格好良いよ…樹。
と自分の世界に入っていたことに少しして気が付く。
「誕生日まで我慢しててね」
「ん…、分かった!」
そう言ってあたしの瞼に優しく甘いキスを落とすと樹はまた優しく笑ってくれた。
やっぱりそれだけであたしの心は熱くなって嬉しさで溢れていっぱいになっちゃうから本当、何度も言うように…単純すぎるほど単純。
…けど、その単純さが。
この後に起きる驚きの出来事に気付くことが出来なかったわけで、
そんなビックリ驚きで一気にあたしが急降下するまでは、そう時間は掛からなかった…わけでして。
ですね、