君は僕のもの 【続】
「…なになに!?
あの矢上がそんなことまでするようになったわけ?」
翔太くんが今日バイトだとかっていうんで、美菜と一緒に下校中。
何だかんだ一人安心しきっていたあたしは、
事の結末的な話を美菜にするのをすっかり忘れちゃってて…
うっかり、…かも?
「うんっ!あたしも本当にびっくりしたぁーっ、
けどとりあえず安心かな?」
そうそう。
“浮気疑惑”に比べたらバイトで一緒に帰れないぐらいへっちゃらだよ!!
だって…、へへへ。
あたしの為なんて考えたら尚更だけどさ。
「何かニヤけてて嫌だな〜、本当に」
と横目で笑いながらあたさを見る美菜に、再び何故か緩む顔。
きっと今のあたしは幸せで仕方がないのかも。
「…で、矢上どこで働いてるの?」
いたって普通の会話の一言として投げ掛けられた質問。
「知らないよ?
…何か知られたくないし、来られたくもないみたい」
それに対してあたしはいたって普通の答えを返した。
…つもりだった、けど。
「えっ!?…もしかして愛梨、知らない訳?矢上のバイト先…」
これはこれは、目を見開いて驚き気味の美菜。
…あれ?
あたし何か変なこと言ったかな??
「う、…うん」
あまりにも顔を近付けて話す美菜に圧倒されながらも、コクリと縦に頷いた。
そうすれば美菜の顔は更に驚いた表情になる。
「何で愛梨ちゃんと聞かないのよ!」
「き、聞いたけど…『嫌だ』って言うんだもん、樹」
あたしはそう言うと、寄り道して歩いていた駅前通りの喫茶店に目を配る。
「どーしてもっと食い付かないのっ!?
怪しいでしょ…?普通に、隠すって」
ふと思い出した前に美菜から言われた念押しの一言。
そ、そっか…!!
もしかしたらあたし…、あぁ考えたくないよぉっ!
と一人で頭を抱える。
「とりあえず再び緊急会議だよ、愛梨!」
よく分からない盛り上がりのテンションの美菜に促されて、
そのさっきあたしが見た喫茶店に半ば強制的に連行とやらをされたのは押しに弱いあたし。