君は僕のもの 【続】
すぐ側から聞こえた不快な声。
…そんな筈は無い。と何度も何度も思いながら、目を開けることを拒む。
「あっれー?無視?シカト?
おーい、矢上く~ん」
この呼び方、ムカつく。
「……。」
ハァッと深い溜め息を吐いてから目を開いて目の前を見る。
やっぱり勘違いじゃ無かったらしくて、目の前には八重歯が特徴的な最近あんまり登場しなかった奴。
「こんなところで何してんだよ」
そう言うと、ドカっと俺の隣に座って足を組む。
それで俺の顔を覗き込むようにジーッとひたすら見つめてくる。
「別に」
チッと舌打ちをしてから、面倒臭そうにも俺は答える。
「相変わらず釣れない男だね~」
クスクスと笑いながら奴は俺のことを見る。
ていうか、あんだけ後味の悪いような終わり方したのに…普通に話し掛けてくるし、しかも妙にコイツも変な感じ。
そもそも俺を釣る必要性は無いと思うけど。
「…で、何してんの?」
しつこい。
「別に」
そう俺が答えると、奴はグッと俺との距離を縮めて、顔を更に近付けてくる。
…う゛っ。
「もしかしてアレか?家に鍵が無くて入れないとか?」
ケラケラ笑いながら『小学生かよ』とか一人で乗り突っ込みをする。
だけど。
「……っ」
「え??…もしかしてマジなのかよ?」
……。
しばらくの沈黙の後。奴の高笑いが響く。