君は僕のもの 【続】
俺の居ない反対方向を見て、フゥーっと煙草の煙を吐き出す。
「確かに、お前の言う通りだったのかもしんねぇなーって……」
だんだんと小さくなる声に、俺も不意に奴を見れば、その顔は寂しげに地面をジッと見つめてた。
ていうか俺…何言ったんだっけ?
「重ねて見てたんかもしんねぇ、梓紗と愛梨」
そこまで言われてから、あぁって。
若干だけど何のことかが思い出せたような出されてないような…けど大体は分かる。
「そんなに似てるの?その女と愛梨」
「…その女って、……まぁー似てる、かなり」
珍しく俺が喋ったことに驚いた顔をしたけど、俺だって人間だから言葉くらい少しは長く話すから。
とか思う。
「顔とかスタイルとか、ちょーソックリ。目の前行くまで気が付かなかったしな」
あー…
だからぶつかった後にそのままで終わりにならなかった訳ね。
コイツは愛梨をその女だと思ってて、あの馬鹿はコイツの顔に見とれた、と…そういうことね。
「ふぅん、あっそ」
何か面白くなくてそんな返事。
「あの後さ、英二が梓紗に俺が戻って来てること言いやがってさ…
色々大変だった訳よ」
重い深刻そうな溜め息を吐いてから、煙草を地面に落として踏み潰す。
ていうか英二って…佐藤英二?
アイツってそんなに迷惑な男なんだ。
「それは大変」
だけど俺がそう適当に言うと『なんだよそれ』って嫌そうに笑う。
「…でもまぁ、俺も頑張ろうかなぁ~なんて、な」
ケラケラ笑いながらも、何だかその表情はいつものチャラ男って感じでは無くって…こう、何か不思議な感じだった。