君は僕のもの 【続】
冷静な、いわゆる…樹の“氷の王子様フェイス”は全く崩れない。
「そんなの関係無くないっ!?」
相変わらずご立腹の美菜を落ち着かせなきゃと思って、そのまま席を立ち美菜の側まで駆け寄る。
―その時、
「ちょっと悪いけど…、樹は今バイト中なの。それに店にも迷惑だからこういうことは止めてくれない?
…だから樹目当てのお客さんは困るのよ」
あ…っ、
さっきの女の人、
でも今この人。樹のこと…“樹”って呼んでた、よね??
それにあたし…
「いや…コイツ、前に言った俺の彼女っす」
樹はそう言うと顔色一つ変えずにあたしのことを指差して、
「…え、この子?」
それに対して何だ驚いた顔をする女の人。
何だかそんな些細な一言に少し傷つく、…だってこれじゃ“この子”じゃなくて“こんな子”って言われてるのと同じだよ…
そんなにあたし樹の彼女に見えないのかな?
『…だから樹目当てのお客さんは困るのよ』
この一言はあたしの胸にチクリチクリと突き刺さってきた。
それってつまりあたしは…隣の席に居た女子達と同じようにしか見えなかったってことでしょう?
傷つくなぁ…、それくらい少しは自覚してるつもりだったのに。
「何か樹にしては意外なタイプかも」
薄ら笑いを浮かべながらもその女の人の目は何だか怖くて、その時すぐにこの人は樹のことが好きなんだと分かってしまった。
だって…もの凄く嫌そうな顔。してるもん。
「そうですか?…タイプとかあんまよく分かんないですけど」
樹…この人とは単語で会話しないんだ。
こんなどうでもいいことに敏感な反応をしちゃうのは、何でだろう。