君は僕のもの 【続】
「…バイトもして無いし、
出来ることってこんなことぐらいしかなくって……だから頑張ったのに」
シュンとしてどんどん萎れそうな感じになってくのを見て、少しだけ責任を感じてみたりする。
けどここでもし凄い形の良い、
良く出来たケーキが出てきたらこんな笑って無いし、そこまで顔が緩んだりしなかったかも。
マフラーといい、ケーキといい。
不完全な、不格好な完成品をいつも俺にくれてくれるから。やっぱ愛梨は面白い。
ちょっと機嫌が悪そうな愛梨の顔色を窺ってみてから、ベッドから下のクッションのとこに腰を下ろす。
「食べる」
それだけ言って愛梨の顔とケーキを交互に見る。
甘いものって好きじゃ無いけど…ていうか出来るなら口の中に入れたくは無いけど。
特に生クリーム。
だけど食べたら死ぬって訳じゃないんだし、っていうか……素直に言うなら、料理音痴の愛梨が作ったケーキだし。
料理の本とかそういうのと睨めっこして作ってる姿が目に浮かぶ。
ふははっ。
心の中で大袈裟に笑ってるけどね。
「あ!じゃぁ取り分けるね!!…えっと、樹はコレと苺あげるねっ」
ニコニコと微笑んで嬉しそうにケーキを取り分ける愛梨。
その顔を見てるだけで俺自身もいつもの無表情とは違って、妙に顔が綻んでくる。
「…そんなにいらない」
そんな俺の小さな声と言葉は、全く聞こえて無いみたいだった。