君は僕のもの 【続】
…樹side



「何なのあの子…」

俺の隣に来た駒川先輩はそう言うと、眉をしかめた。


それに対して俺は何も反応すること無く仕事に戻りいつも通りにバイトを終える。


更衣室に行き、制服のブレザーの中に入っている携帯を開いて…メールか何かが来てないか。なんてかすかな期待を、


いつもなら能天気な愛梨からのメールやら何やら。

入っていたりするのに、こういう時になると何も無いからきっとあの時の愛梨の態度から見て、何か不満にさせる様なことがあったんだと確信した。



おそらく。

その原因は駒川先輩だろう。


「…はぁ、」

深くも重い溜め息を吐きだすと、そのまま更衣室を後にする。


何でこんな面倒なことになってるんだか。


「樹、今帰り?…なら一緒に帰らない?」

ドアをバタンと閉めたのとほぼ同時にそんな声が聞こえてふと下に向けていた視線を上に上げる。


「あ、別にいいですけど」

バイトを始めた頃から何故か駒川先輩とはよくこうやって一緒に帰らないかと誘われることが多い。


それは偶然か、それとも故意的なものなのかは不明だけど。


『最近、不審者が多いの』とか『後を付けられてるような気がするの』とか…

そんなことを以前、駒川先輩が口にしたせいで。


バイトの先輩たちから、一番方向が同じ俺に先輩を家まで送るという勝手な義務が義務付けられた、わけで。


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