君は僕のもの 【続】




響さんが出て行って少しシーンと静まる部屋。


チラリと樹を見てみれば、ムスッと不機嫌そうないつもの顔をしたままで…何も言わずに響さんに続いて部屋から出て行ってしまった。



…あ、行っちゃった。

再び耳に入ったパタンとドアの閉まる音。


なんか話がややこしくなっちゃったような気がするなぁ。


一生懸命…作ったんだけど。

とそう思いながら“いかにも”って感じの紙袋をギュッと瞑れない程度に両腕の中で抱いた。


「不機嫌、…はぁ……」

溜め息を吐いて目を伏せる。


だんだんと増してくるモヤモヤにちょっとばかり気持も沈む。


久々に見た二人の言い合いも、あたしにとっては面白かったけど…もしかしたらそんなあたしの姿も気に喰わないものだったのかも。


樹にとっては……さ?



…シーン。


無意識に唇を尖らせ頬を膨らませる。

食べちゃおっかな。


それより、帰っちゃおっかな……



だって今日がバレンタインだってことぐらい樹なら絶対分かってる筈だしさ?

なのに無視して出て行っちゃうなんて、ちょっと酷過ぎる気がするよ…


しかも電話だって出てくれなかったし。

あ、でも響さんに取られちゃってたんだっけ…



そう思ってると上着のポケットに入っていた携帯が「ヴヴヴ…」と鳴り始めた。



「メールかなぁ…?」

ポツリと呟いてあたしはポケットに手を入れた。


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