君は僕のもの 【続】
頬を掠める程の風が揺らす木や髪。
あたしからの返事がなくても樹は上を見上げたままだった。
「なれればいいかもね……また」
…何を考えてるんだろう?
空か桜の木か。
眺めながら何を考えてるのか、相変わらずな樹はそんなことを言ってみせた。
「…そうだね「それに」」
目を細めて言った時…
振り返った樹の背景と絶妙な風。
目を大きく見開いてあたしは息をするのも忘れていたのかもしれない。
スローモーション。
靡く茶色の髪。
前髪の隙間から覗く薄く開けられた大きな猫みたいな瞳。
大人のような子供のような……
「いつも目の届く所に置いておきたいからね」
日差しが当たっていた筈のあたしには影が掛かる。
『愛梨は本当に危なっかしいから』とクスクス笑いながら付け加える様に耳元で囁いた…
顎を掴まれ上を向かせられれば、目の前には満足そうに微笑む彼の姿がある。
「あ、危ないって…」
何だか子供に対して言っているみたいで腹が立つようで恥ずかしい。
視線を泳がせたまま顔を赤らめるあたしを、樹はやっぱり余裕の笑みで見つめながら笑う。
「だってお前は俺のでしょ?
……嫌なんだよ、自分のもの取られるのは」
自分の“もの”って言ったよ…この人!!
「あたしは物ですか…っ」
不貞腐れて言う。