君は僕のもの 【続】
「じゃぁ…」
小さくも大きくもない声でそう言うと、俺はそのままドアの方へ歩を進めた。
このまま何を言っても埒が明かないと思うし…
どうせワーワー、ビービー泣かせることになるんだろうし。
──その時だった。
「……い…樹っ!!」
急にでかい愛梨の声が沈黙が充満するこの部屋の中に微かに響き渡った。
瞬間的に振り返るわけでもなく。
いたって冷静で、淡々とした感じでゆっくりと後ろを振り返る。
そして心の中で変な予想をしておけば、
その予想は思った通りの結果だった。
「泣いてる」
少し笑ってしまうのは俺が俺であるからだろうな。
「…あのね、違うんだよ、本当は……違うの」
でた。
コイツの言い訳の時には必ず言うってぐらいの口癖、『違う』って言葉。
そんな言葉にいつもなら苛ってするのに今回…っていうか今はどうもそう思ったりもしなかった。
不思議なことに。