君は僕のもの 【続】




「…でも、どうして急に……?」

伏し目がちにもそう問いかけると、樹は何かを思い出したかのように、急にあたしから離れた。


??

いつもなら…

なんて思うとこんな樹の突然の行動に少し驚く。


「何?期待したの?」

っ!?
…き……期待なんて、して…ないもん。


「違う!!」

と言い張るあたしを樹はいつもの不敵な笑みを浮かべて見ている。

するとそのままドアの方に向かうと『手、洗ってくる』とか言って出て行ってしまった。


バタン閉まったドア。


「…どうしたんだろう?」

無意識にも口から零れた自分の声、大体わざわざ樹が手を洗いに戻ることが不思議で堪らないわけで。

もしかして風邪に掛かりたくない…とか?

予防してるのかな?


うーん、でも珍しいなぁ、


なんて考えているうちに階段を上がってくる音が聞こえて、あたしの部屋に樹が戻って来た。


隣にドサッと座るとあたしのことを見て少し笑う。

だからこそ首だけ傾げて、どうして笑ってるのかと問い掛ける様にして樹を見返すと、樹はまたクスクスと笑ってから。

「どうして急に手を洗いに行ったの?って?」

とあたしの心の中を読み取ったようにそう得意げに言ってみた。


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