君は僕のもの 【続】




何かをまた思い出したように樹が言う。


不思議に思って首を傾げてみると、フッと小さく樹は笑ってみせた。


「…どうしたの?」

下から見上げる様にして言う。


「欲しい物なんかある?」

と顔色を何も変えずに樹は言うとあたしをさりげなく押し倒した。


欲しい物…

なんて、考えてる暇も無く。
超ドアップに樹の顔があって、妙に焦る。


「え、…えーと、」

急に聞かれた事とこの状況でとりあえず出てくるのはこんな言葉達。


「早く」

煽る様に樹が言うから、…もっと、もっともっと焦る。


こんなの今すぐに答えろって方がおかしい。

そもそも…この態勢の意味が分からない。


「ちょっと、退いて…欲しい」

蚊の鳴くような小さな声。


これじゃぁ考えられないもん。…だから、


「嫌だ。」

そ、即答。


仕方なく頭を捻って考えてみるけど、実際に欲しい物と聞かれたらたくさんある。

例えば最近、駅前で見かけたショップに飾ってあったワンピースとか、こないだ美菜と立ち寄ったアクセサリーショップにあったペンダントとか。


他にも指を折りきれないほどにある。


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