君は僕のもの 【続】
塞ぐように重なる唇。
いつも以上にその樹の突然の行動に驚いて…少しあたしの動きも止まって。
一瞬だけ時が止まったような感じ、
「余計なことばっか話す口は塞ぐ」
相変わらずな感じで樹はそうサラッと言うと、もう一度あたしの唇に指を伝わせた。
この天然なんだかよく分からない性格。
照れる素振りなんて一つも見せないし…本当、謎。
「“愛梨でいい”じゃない、“愛梨がいい”わけ」
ジッと目を見つめて、でも少し不機嫌なのか…でも樹はちゃんとそう言ってくれた。
それだけでどんどん、
心と目頭が熱くなっていっちゃう。
…泣くな泣くな。
ここは無く時じゃないのに、そう思えば思う程に色んな気持ちが溢れて涙になっていく。
もしかしたら樹はもう自分を好きじゃないんじゃないかとか、こんな自分が樹の側にいるのは不釣り合いなんじゃないかとか…
あたしなんかの何が良くて、樹は付き合ってくれてるのかな、なんて。
考えるまでも無かったんだよね。
大体、こういう性格の樹だからこそ…今こうやってあたしの側に居てくれてるってことは、ちゃんとあたしを想ってくれてるってことで、
あたしに嘘をつかずに話してくれたもの、それはあたしを想ってのことで。
そう思って、良いんだよね。