君は僕のもの 【続】




引き上げられた顎に少し力が加わって、それに伴って樹の端正な顔立ちが近付いてくる。


長い睫毛、二重で猫目の大きな目。

整った鼻筋に、綺麗で形の良い唇にこれからキスをされる…なんて予想をしてみれば、妙に顔が綻んでしまいそうになっちゃう。


猫のような彼だからこそ、彼は猫なんじゃないかって思うことがある。


気まぐれで、自己中だし。何より我が儘で自分勝手で、
…突然の行動が多いし、なのにボーっとしてたり天然だったり。

何考えてるのか分からない時のが多いし。


だけどいっつも急な甘い言葉をくれる。


樹の一つであたしは泣くし悲しむし辛い思いもする。

けどその樹一つであたしは笑うし嬉しくなるし…何より、幸せで満たされてしまう。


人から単純と言われたっていい。

それでも、いい。



「それに…」

もう一度さっきと同じ言葉を繰り返す。


「……、」

黙ったままその絡まる視線の中で、どんどん加速するこの妙な熱さ。


するとその手を滑らせて頬に。そして、優しくフッと笑ってみせる…



「愛梨が困らせるのは、俺だけで十分でしょう?」


何も言えずに固まるあたしに目で樹は合図を送る。



「……っ、…うん!」


あまりにも声を張り上げて言ったあたしを樹はクスッと笑って、甘い甘い口付けをあたしにくれた。


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