君は僕のもの 【続】
大体…俺が世間的な良く出来た男みたいに、好きな相手の誕生日を器用に完璧に祝えるわけ無い。
別に祝いたくないとかじゃなくて…
何ていうか、そういうのってやっぱ照れくさかったりするじゃん。
特にそういうの。苦手だし。
まぁ、さっきのは確実に俺が悪かったけど、悪かったけど。
珍しいくらいに頭の中で自問自答を繰り返してみる。
それに俺だって何も考えてないわけじゃない。
好きな奴の誕生日くらいちゃんと覚えてるし…俺がいくら面倒なことが嫌いだからって、誕生日に何もしないわけも無い。
…ったくさぁ、
屋上までの階段を上っているうちに午後の授業開始のチャイムが鳴る。
あーあ。
だけどまぁ仕方ない。
やっとのことで屋上のドアの前まで来るとそのまま伸ばした手をノズルに向かわせて外に足を踏み出した。
寒い……。
ビュゥーッと吹いた冬の風に身体を少し縮ませるように竦ませて、そのまま歩を進めると、
…、?
俺と愛梨が二人で昼を食べる時に居る場所に誰かが居る。
コンクリートで出来た壁に寄り掛かる様にしてそのまま寝ているように見える。
少し茶色い長い髪。灰色のカーディガンに女の制服。遠くから見てもその“女”は俺の知っている“女”の中で誰よりも知っている“女”で。
「……外で寝てるし、」
独り事のように俺は呟いた。