君は僕のもの 【続】
見て見れば樹は薄いカーディガンだけを身に付けていて、これじゃぁ…風邪引いちゃうよ!!
なのにあたしにブレザー掛けてくれたんだ。
そんな些細な樹の優しさにさっきまでのことが何処かに消えて、胸がキュンとなってしまう。
「もう…これじゃぁ樹が風邪引いちゃ──…」
そこまで口にして言葉に詰まる。
何?…え、どういうこと……?
ジワジワと熱と潤いを増しだすあたしの目、そして掴もうとしたはずのブレザーに手が行く前にその行き先は宙に浮んだようになっていて。
ただそのまま伸ばした腕の先にある指を茫然と眺めることしか出来なかった。
「……っ」
頬を伝っていく涙はさっき一人で流した涙とは違って暖かく、温かい。そんな涙のような気もする。
そのまま顔だけを隣の樹に向けて言葉にならない想いを問い掛けて、
「また泣いたの?」
いつもの余裕な笑顔の裏に少しの哀しさも含まれている。
だけどその冷たい指先で溢れて止まらないあたしの涙をスーッとなぞる様にして拭ってくれた。
でも止まらない涙は行き先を無くしてただ下に零れ落ちる。
あたしは…樹に酷い事を言ってしまった。
樹が何も考えてないとか、そんなことある筈なんて無かったのにそんな…酷い事を言ってしまった。
「…ごめ、…んね…っ…」
乱れる呼吸のまま声を絞り出すようにしてそうあたしは言った。
ただ謝りたくて、謝りたくて、謝らなきゃいけなくて…こう言う時にいっつも思う。
何だかんだで傷付いてるのはあたしじゃない、樹だってあたしのせいで、きっときっと何度も傷付いてる。