わたし竜王の番(つがい)です  ~気が付けば竜の国~
「今日もいい天気」

両手両足を伸ばしてお行儀悪く寝ころんでも、多分誰からも見えない。

こんな所をミーナ様に見られたらきっと「下品な」とか「やっぱり品のない者は」とか言われちゃうんだろうなと思ったけれど、それは本当のことなんだから仕方ない。
誰もあの綺麗な生粋のお姫サマには勝てやしない。

この鱗、外しちゃおうかな

ふとそんな考えが頭をよぎる。

”楓が剥がしたいと強く思わない限り剥がれることはない”確かクリフ様はそう言っていた。ということは、強く願えば剥がすことができると言うことだろう。

ただ、この日光の下で剥がすのはやめておかないと。
ここの紫外線量、半端ないから。鱗に守ってもらわないと真っ赤になってしまう。


仰向けになって寝ころんでいたらふわふわした何かが腕に触れた。
風でなびいた綿毛みたいなものかと思ったら何だか違う。

「あら、ひよこちゃん」

昨日のひよこが今日もいた。

きゅいきゅいと羽をパタつかせて小さく鳴くと私の頬にすり寄ってきた。

「あなたとってもかわいいわね。よかったら私とお友達になってくれる?」

翼を人差し指でそっと撫でると、きゅぴっと可愛くひと鳴きして身体を震わせた。

たぶん、嫌がってはいないわよね。

それから背中をさすってみると気持ちよさそうにうっとりと目を閉じてしまうので、くちばしの下や尾羽辺りにもチャレンジしてみた。

どこを触っても嫌がるそぶりは見せないけれど、気持ちがよさそうなのは翼の付け根と・・・お腹だった。

「ねえ、ひよこちゃんのお母さんはどこにいるの?」

無防備に私の膝でお腹を見せてうとうとしているひよこに声をかけてみるけれど、返事はなく代わりにぷすぷすと寝息のようなものが聞こえた。

この、呑気な空気感に癒される。

謎のひよこを膝に乗せているうちに私も大きな欠伸が出た。
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