わたし竜王の番(つがい)です ~気が付けば竜の国~
「…楓さま。楓さま。このような所でうたた寝をすると、お体に障ります」
私は迎えにきたパメラさんに揺り起こされていた。
「やだ、うたた寝しちゃったのね。あまりにひよこちゃんの肌触りが気持ちいいから」
どうやら撫でているうちに寝てしまったらしい。
昼近くまで眠っていたのに、更にお昼寝するなんて。
「ひよこちゃんは?」
「ひよこちゃん?」
パメラさんが首をかしげた。
「そう。昨日のひよこちゃんが今日もいたのよ。あの子を撫でていたらいつの間にか寝てしまって…。
もういないのね。母鳥が迎えにきたのかしら」
「私がお迎えにきた時には何も」
「そうなの。残念だわ」
「ああ、それよりも楓さま。今日はもうクリフォード様がお帰りになられるそうです。さっき執務室から連絡が入りました。館にお戻りになられた方がよろしいかと」
「そうね」
私は気乗りしない声を出した。
クリフ様がまたミーナ様の話をするのならお会いしたくないというのが本音だ。
パメラさんに連れられ中庭を出て宮殿の廊下を歩いていると、年配の男性が私を見てつかつかと歩み寄ってきた。
その姿に護衛がさっと私の前に出てきて更にパメラさんが私の前を塞ぐ。
「ヤナーバル様お待ち下さい」
護衛の声が硬く廊下に響く。
貴族の服装だと思った。
誰だか知らないけど、私に何の用だろう。
赤茶色の髪に同じ色の口ひげ。
身分が高いのだろうお付きの人をたくさん連れている。
それは普段は身軽を好むクリフォード様よりも多いほどだ。