わたし竜王の番(つがい)です  ~気が付けば竜の国~
「楓、私が竜に変化する。楓は私の背中に乗るんだ。ゆっくりと舞うから私たちの館の部屋に帰ろう。とにかく医者を呼び身体のチェックをして話はそれからだ。私はヤツの後始末をきっちりつけなくてはならないし」

帰ろうと言うクリフ様の手を私はぐいっと押し戻した。

「あそこには帰りたくない」

「楓?!」クリフ様の顔が驚愕で固まった。

「ムリよ。今はもう無理。あんな悪意をぶつけられて自分の意思なく身体を乗っ取られて、しかも飛び降りるなんて・・・私、殺されるところだったんだわ」

急にお腹の底から吐き気がこみ上げてきて、ペタリと草原に座り込む。

すると、寝ていたはずのひよこちゃんが再び大空を飛んでいた時と同じ大きな身体になり、私を自らのお腹のあたりの羽毛に隠すようにすっぽりと包み込んでしまい、クリフ様から隠してしまった。

「かえでっ」

ひよこちゃんの翼の向こうからクリフ様の悲壮な声が聞こえる。

「ごめんなさい、宮殿へはクリフ様だけお戻りください。私、今はあそこに戻る自信がありません。私はこの子に匿ってもらうことにします」

ふわふわとした羽毛に顔を寄せると、身体全体が羽毛に包まれて胎内にいるような心地よさに変わっていく。次第にクリフ様の声が聞こえなくなり、私はまた意識を失った。


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