わたし竜王の番(つがい)です ~気が付けば竜の国~
ぷかぷかと浮き輪で温水プールを漂うように浮かんでいるような感じ。
目覚めているのか眠っているのかもわからない。
まぁ、いいか。
目覚めてもイイことなんかありはしない。
今回は無事だったけど、次はわからない。
あそこにいたら日々墜落の恐怖にさらされる。
無事にクリフ様と結婚したとしても待っているのは夜な夜な彼がミーナ様のところに行ってしまうのを我慢する日々だ。
地上には帰してもらえない。
自力でも帰れない。
だったらこのままでいいんじゃない。
このままここでずっと浮かんでいられたら・・・
ーー楓
ーーー楓
誰?
もしかして私を呼んでいる?
ーーー楓、返事をしろ。起きているんだろう?
「誰?」
私を呼ぶ声に返事をすると、
ーーー地上にある楓の木からは甘いシロップが取れると云うのにお前は少しも甘くないんだなーーー
と失礼な声がした。
正確には耳から聞こえたのではなく心に響いてきたのだけど。