わたし竜王の番(つがい)です  ~気が付けば竜の国~
クリフ様は何も言わず治療魔法をかけながら、私のブラウスを破り背中の傷を露出させていく。
再び、クリフ様が息をのむ気配がしたと思ったら背中にポツリポツリと温かいものが落ちてくる感触がした。

「クリフ、だから・・・大丈夫だって・・・言ったじゃないの」
私は振り返り、俯いて治療魔法を続ける彼の頭を抱きしめた。

「・・・なぜ、これが。楓、どうして私の鱗がー」

「・・・寒かったのよ」

おそらく涙をこぼしているであろう彼の頭をしっかりと胸に抱いて話しかける。

まだ息苦しさと痛みはあるけれど、傷は彼の魔法の効果で麻酔がかかったように次第に痛みよりも痺れ感の方が強くなってきていた。

「あなたの鱗を外したら・・・スースーして風邪を引きそうだったの。・・・だからここに来る時に・・・貼り付けてきたのよ。・・・正解だったわ」

正確には鱗はクリフ様が付けた時のように体と同化しているわけではない。
でも、外す時に強く念じて剥がれたのだからまた強く念じれば貼りつくのかと思って、鱗を元の場所に置いて懸命に念じたら絆創膏のようにくっついたのだ。

あのナイフが深く刺さらなかったのはこのクリフ様の鱗とリチャードさまから頂いたあの特別なローブのおかげだ。

あの時、ナイフはこの特殊なローブの上からちょうどクリフ様の鱗のを貼った部分に刺さるようにして私の身体に入ってきた。
おかげで肺に達することもなく浅い場所で済んだのだけど。

それでも、ぐさりと刃物が刺さったのだ。傷はついたし、痛くないはずがない。
それに息苦しさもある。
治療魔法も完全ではない。痛みを和らげ治癒を促進するもので、すぐに傷が無くなるわけではないのだ。

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