わたし竜王の番(つがい)です ~気が付けば竜の国~
「クリフ・・・」
「クリフォード様」
マルドネス様とアリアナ様が部屋の入口に立ち真っ青な顔色をしていた。
それはそうだろう。何と言っても竜王に刃を向けたのはアリアナ様の侍女だ。
王位継承権第二位のマルドネス様の奥方の侍女なのだ。
王位を狙っている疑惑を持たれても仕方がない。
いや、私は信じないけど。
だってマルドネス様は常々言っていた。
早く婚姻を結んで私たちと親類になろうと。
王妃になって自分たちの抱える王家の責任と仕事を私に少しでも肩代わりして欲しいと笑っていた。あの言葉と笑顔が嘘だったとは思えない。
「背後関係を掴むまではいろいろ言われるだろう。早期解決をしたいから協力してくれよ」
クリフ様が二人に優しく語りかけた姿にホッとした。
クリフ様も彼らのことを疑ってはいないんだと思う。
「もちろんでございます。お許しくださいませ、クリフォード様」
アリアナ様ははらはらと涙をこぼされ、マルドネス様に支えられている。
「あの侍女は姉の紹介で雇い入れていた。だが、もしかしたら義兄の実家の縁者だった可能性があることを失念していたとは情けない」
マルドネス様は床に膝をつき震える声で謝罪をした。
「ーーー謝って許されることではありませんが、申し訳ございませんでした、陛下」
「その件はまた話し合おう。とりあえずマルドネスも奥方と子供を連れて本宅に戻れ。警護を怠るなよ。私もひとまず楓を隠すことにする」
そう言って私を抱いて立ち上がると、転移魔法を唱えた。
ふわっとしたのは一瞬だった。
前のように眩暈はしない。
とんっとクリフ様の足が床に着いたような感覚がして目を開けると、見たことのない部屋にいた。
離れの館の部屋じゃない。
ここはどこだろう。