わたし竜王の番(つがい)です  ~気が付けば竜の国~
竜殺しはその名の通り竜を殺すためのナイフだ。
たとえ竜王でもあのナイフで殺すことができると言われている。

昔々、竜王と女神が出会い熱烈に愛しあい結婚をした。しかし竜王に恋をしたのは女神だけではなかった。
竜王の幼なじみであった魔女が嫉妬に狂い自分の血液から抽出した毒をナイフに塗り込んで作ったものだと言われている。

あの”竜殺し”とはナイフに練り込まれた毒を竜の体内に入れることによって作用させるものであり、基本的にそれで刺すことが致命傷になるわけではない。
もちろん、ナイフなんだから刺さる場所が悪かったり傷が深ければ危ないけど。

毒に関しては、竜の血が流れていない者には効果がないと言われているのだ。

「もしかしたら、ってことは考えなかったのか」

「そんな事これっぽっちも考える余裕なんてなかったわ。あなたが狙われたのよ。冗談じゃないわ」
私は唇を尖らせる。

「楓…それでも私はまた息が止まるかと思った・・・貴女を失くしたらーーー」

顔を曇らせるクリフ様。その顔は苦悶に歪み泣いているようにも見える。

ごめんね、私はこのところあなたにそんな顔をさせてばかりだわ。

「私は死なないわ。・・・だっていつもあなたが助けてくれるもの。・・・そうでしょう?私の大切な番さん」

私は表情筋を総動員してニコリとほほ笑んだ。
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