わたし竜王の番(つがい)です  ~気が付けば竜の国~
「楓!」
みるみるうちにクリフ様の目が揺れる。私の頬を撫でていたその手が顎にかかり、私は目を閉じた・・・

トントンドーン。
「楓さまっ!!」
「がえでざまぁあああーん」

悲鳴のような声がして女性たちが転がり込むように部屋に入ってきた。

・・・うん、確かにノックの音はしたかな。
でも、ノックと扉を開けるのがほぼ同時だと、ノックの意味はあまりないかもしれないよ、パメラさん。

ちょっといい雰囲気だった私たちは乱入してきた侍女二人とメイド二人に驚き気まずくお互いから目をそらした。

「楓さま、先日も今もこんな危険な目に。なんておいたわしい」
「ああ、お会いしたくて堪りませんでした。よくぞご無事でっ」
「ああーん、がえでざまっ。うえーーん」
「かえでさまー。もうどっか行っちゃいやですぅー。ええーん」

女性たちはベッドに駆け寄ってきた。
メイド二人はベッド脇の絨毯の上に座り込み泣き出している。

侍女さんたちはメイドさんたちより冷静かなと思ったけど、そうでもないらしい。
私に寄り添う竜王さまであり主人のクリフ様を邪魔だとばかりにぐいぐいと押しのけようとしているからだ。

「おい、こら、やめろ。私はここを退く気はない」

「クリフォード様、ここはお任せ下さいまし。楓さまのお世話は私たちが。お着替えもございますし、何より早く医師にお診せしませんとっ」

見ればベッドの足元辺りでおろおろと所在なさげにしている白衣の男性がいる。

そういえば、まだ医師の診察を受けていないことに気が付いた。
クリフ様の魔法で痛みが緩和されていたから一寸忘れていたっけ。
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