わたし竜王の番(つがい)です  ~気が付けば竜の国~
「あ、えっと。両親は二人とも医者なんです。以前、彼らはフラフラと放浪生活をしていると言いましたけど遊んでいるわけじゃなくて、世界中の無医村を巡っていたり、たまに祖国に帰っているみたいなのでそういう時は全く連絡が取れません」

「祖国?楓はキキリア国生まれだったはずだが、ご両親は違うのか?」

「はい。実は両親は”救国の旅人”でこの世界の人間ではないのです」

「なんと」
クリフ様の顔に驚愕の色が浮かんだ。

「ですが、私はこの国で生まれてこの国で育っていますので両親の祖国の記憶はありませんし、私は連れて行ってもらったこともなくて、他の世界のことは何も知りません」

「まさか楓のご両親が”救国の旅人”とは・・・・知らなかった。---そうか」

クリフ様の表情が明らかに変わった。
赤い瞳がきらりと輝き唇に微笑みが浮かぶ。

「楓、もしかしたら特効薬が見つかるかもしれない。私は出掛けてくるから戻るまでおとなしくしているんだぞ」

クリフ様は朝食もそこそこに私の頬にキスすると出て行ってしまった。侍従と護衛が慌てて後を追っていく。

残された私とパメラさん、エメやネリーはクリフ様の勢いにポカンとして見送った。

「あの、楓さま。失礼ながら聞いてもよろしいですか?」
「ええ、”救国の旅人”のことでしょ?」

「そうです、それです」

パメラをはじめエメとネリーはこくこくと頷いた。

「私も知っていることは多くないんだけどねーーー」
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