わたし竜王の番(つがい)です  ~気が付けば竜の国~
「うおっほん。んんうーん、んんっ、んん」

父が母が私のブラウスに手をかけたところでわざとらしい咳払いをはじめた。

「なに?お父さん風邪?」
母は父を振り向きもせず、私のブラウスをめくろうとする。

「あ、いや、待て、待て、待て」
慌てた様子で父が母の手を止めると、私の顔をちらりと見てからクリフ様に視線を合わせた。
私の傍らには私の手を握っているクリフ様がいる。

「陛下、娘の診察をしますので」

で?とクリフ様は早くしろとばかりに顎をしゃくる。

それを見た父の口がへの字になりやっとああ、それか、と思う母と私と侍女さん。
そして、もう今さらだよと思う私と侍女さん。

父はクリフ様の前で私の肌を見せることに抵抗があるのだろうが、治療魔法もガーゼの取り換えも医師を差し置いて毎日クリフ様がしていたから、ホントに今さらなのだ。
宮殿の医師も苦笑いしていたもの。

ちなみに護衛をしてくれる方は退室してドアの外に控えてくれる。

チラッと父の顔を見て、ごめんねと目で訴え自分からブラウスの肩口をはらりと広げた。

「ハイ、早く診て」

ああ、ちょっと父がかわいそうだが仕方ない。
父も眉を八の字にしてクリフ様を見ていたけれど、私の傷口を目にするとすぐに医者の顔つきに変わった。

傷自体はほぼ塞がっているのじゃないかと思う。
私からは見えないし、わざわざ鏡で見ることもないので、クリフ様から聞いただけだけど。

両親は丹念に傷口を診ている。
受傷した状況や凶器についてはあらかじめクリフ様から聞いていたらしく、幾つか確認をしていた。

痛みはほとんどない。
ただたまに疼くような嫌な感じはあった。

「これならば傷跡は多少残るが、体内への影響はなさそうだね」
「ええ、よかった。これも竜王陛下の治療魔法と楓の治癒能力の高さのせいね」

両親はホッとしたように私の背中を見つめケロイド予防の薬を塗ってくれた。

ただクリフ様だけが厳しい表情をしていた。
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