わたし竜王の番(つがい)です ~気が付けば竜の国~
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私が知っていたのは”竜殺しのナイフ”が竜王を殺すために作られたものだということ。
竜殺しのナイフを作った魔女は愛する竜王を自らの血で作った毒で殺し、竜王の愛する女神を呪い殺したのだという。
大昔、運命的な出会いをして愛を育み結婚した竜王と女神はこの宮殿で幸せに暮らしていた。
しかし、竜王は彼を愛していた魔女の気持ちに気が付かず、幼なじみの気軽さで魔女が宮殿に訪れることを許可してしまったのだ。
まさか自分が殺されるとは思わず。
それは苦労した末に愛する人を手に入れて、幸せに浸っていた竜王の心の緩みだったのかもしれない。
魔女は油断していた竜王に不意打ちをくらわせた。”竜殺しのナイフ”で切り付け、慌てて駆け寄った女神をもそのナイフで刺したのだった。
「竜にしかあの毒は効かない。女神には神だけに防御力が強く即死するような傷を負わせることはできない。
だから魔女は女神を自分の呪いがかかるように竜王を刺したものと同じナイフで刺したんだ。魔女の女神を妬み憎む気持ちがあまりに大きく強かったから呪いも強大なものだった」
クリフ様がに憎々し気に言い放つ。
「まだあと数百年生きられたはずの竜王は魔女の毒で死んでしまい、女神はその場で死ぬことはなかったが魔女の呪いによってどんどん衰弱していった。
魔女の狙いはそのまま衰弱死させることだっただろうが、女神はその後もしばらく生きて大きな仕事をした。
女神は竜王の子どもを宿していたんだ。
普通の竜族は卵で生まれてくるのだが、女神は竜王の子どもを卵ではなく赤ん坊で生み、乳を与えた後しばらくして亡くなった。ーーー私はその時生まれた赤ん坊の子孫なのだ」