わたし竜王の番(つがい)です  ~気が付けば竜の国~
「楓はこちらの世界で生まれたからね、私たちは楓がそんなルーツを無理に知らなくてもいいと思ったんだ。私たちにとっては祖国でも異空間を移動するにはそれなりに訓練をする必要もあったから無理をして楓をあちらに連れて行こうと思わなかった」

「”救国の旅人”の使命は一代限りなの。今までの”救国の旅人”はみんな祖国に戻ってしまったけれど、この世界に移住する旅人がいてもいいかなと思って。ここで生まれた楓は好きなように生きられるし、異世界のことなんて話さなくても特に支障がないと思っていたのよ。だってまさか、楓が竜王の番になるだなんて思ってないしね」

両親は顔を見合わせながらゆっくりと話した。
今話されていることがにわかには信じられない。

「女神さまの一族とかお父さんたちの生まれた国のことを話して?」

「そうね」

母は私の頭をそっと撫で始め、クリフ様は話の腰を折らぬようにそっと人払いをしてくれた。

クリフ様が出て行かなかったのは私が彼の手をしっかりと握りしめて出て行かせないようにしたからだ。

呪いが解けたらしい私の具合はよくなっていて、もう身体のだるさはない。
落ち着いて話ができるように窓際のソファーに皆で移動した。


「宇宙にはいろいろな星があってね、更に違う次元の世界も存在している」

父が私の眼を見ながら落ち着いたトーンで話し始めた。
”宇宙”
話が更に大きくなっていて自分に関係があることを理解すると言うよりおとぎ話的な他人の話を聞いているようだ。

「私と母さんが生まれたのはここと違う次元の世界にあるジャニアルスという国なんだ。で、その世界を統治しているのが女神さまだ。この世界と関係していた当時の女神さまの名前はピュリラ様。
この国で竜王に嫁いだ女神はピュリラ様の妹君のジョルジナ様という」

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