わたし竜王の番(つがい)です  ~気が付けば竜の国~
ピュリラ様のことを語る母の顔は苦しそうで大昔の話だったというのに今でもピュリラ様が苦しんでいるようにも聞こえる。

父はそんな母の手の上に自分の手を重ねて言った。
「私も母さんもピュリラ様の遠い遠い子孫なんだ。私たちはもう神と繋がりなど無いに等しいほどにただの人間なんだけれど、それでも私たちや楓の身体にはピュリラ様の血が少しだけ流れていて、それはこの国に嫁いだジョルジナ様にも繋がっているというわけだ」

「だから、私が呪われてしまったってことね」

「そう。でも、楓が呪いを受けても死んでしまうほど衰弱しなかったのは女神さまの血が薄いことと幼いころから我が一族に伝わる粉薬を飲んで丈夫な身体を作っていたからだし、呪いを解除できたのはピュリラ様の霊水を飲んだからなんだ。
ジョルジナ様を亡くした後でピュリラ様は呪いの研究や薬の研究に打ち込み、その結果呪いだけでなく医療にも精通するようになった。その影響でピュリラ様の血筋の者には医療従事者が多いんだ。私たちみたいに、な」

そうなのよ、と母が父に同意して頷いた。

「クリフ様は”救国の旅人”のことをご存知だったんですね」」
クリフ様に視線を送ると、ゆっくりと首を縦に振り「もちろんだ」と返ってきた。

娘でも居場所がわからなかった両親を探し出して連れて来てくれたことは大感謝だ。
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